5月中旬
私は普段通りすごしていた。新学期に咲いていた桜はもう散り緑の葉に変わった。朝のホームルームで鈴木先生が連絡事項をクラス全員に伝える。

「おはようございます。今日の6時間目の特活では6月25日に行く鎌倉班別自主行動の班を決めます。なので誰となるかなど友達と少し話しておいてください。以上。」

鎌倉か。行ったことないな。ぼーっとそんなことを考えているとあおいちゃんから声をかけられる。

「美波ちゃん。もし良かったら私と一緒の班になってくれないかな?」

照れくさそうに言った姿はとても可愛いかった。

「もちろん。桜ちゃんも一緒の班だけど大丈夫?」

「うん。音瀬さんと仲良くなってみたいな」

「すぐ仲良くなれるよ」
そう話していると桜ちゃんが私の席へやって来る。

「美波ちゃん。鎌倉同じ班になろ!」
元気よくたずねてきた。

「もちろん。あおいちゃんも一緒だよ」

「楽しくなりそうだね」
私は桜ちゃんに答えた。すると桜ちゃんはあおいちゃんを見て言う。

「佐々木さん。よろしくね。」

「佐々木さんじゃなくていいよ。あおいって呼んで」

「わかった。あおいちゃん。よろしくね」

「桜ちゃんもよろしくね」
ふたりはあっという間に仲良くなった。このふたりと仲良くできる私は幸せだと思った。





6時間目になり班決めが始まる。

「まずは班の決め方や人数から説明します。一班男子3人、女子3人で6人班でこれから活動してもらいます。まずは男子同士、女子同士で決めてください。では自由にたち歩き、決まった人は先生に伝えに来てください。」

仲のいい子同士でみんな組み始めた。私たちは朝のうちに約束していたのですぐに先生の所に向かった。
男士は数分で決まった。
問題は女子だ。3人という人数は微妙な数だから大変なのだ。4人で仲良くしているグループは誰が違うところに入るか、2人で仲良くしているグループは誰を入れるか。女子の心理戦はもう始まっているのだ。私は最初に桜ちゃんとあおいちゃんと組めたから心理戦は参戦しなくてすんだ。よかったと心の中で思った。
なんやかんやで男子同士、女子同士の班が決まった。次は男子の班と女子の班がくっつかなければならない。最初はクラス全員恥ずかしくて誰も行動に出なかったが、クラスのムードメーカーの安藤くんが女子グループを誘ったのをきっかけにみんな班が決定し始めた。
そんな時後ろから声をかけられる。

「白雪さんたち。一緒の班になってくれませんか」

そう声をかけてきてくれたのは青木竜二くん。私が自己紹介で噛んでしまった時クラスの雰囲気を明るくしてくれた人だ。青木くんには恩があるので一緒の班になることにした。他の男子は誰なのか見てみるとまさか、同じ班にレオくんがいるとは思わなかったからびっくりした。深いため息がもれる。

「同じ班で大丈夫?」
と桜ちゃんに心配されたけれど自分のわがままでクラスメイトに迷惑をかけられないので我慢することにした。





鎌倉班別自主行動、当日の朝は学校集合ではなく駅集合になっていた。桜ちゃんと一緒に駅に向かう。

「美波ちゃん。レオくんのことだけど何かあったらすぐに私に言ってね」
と桜ちゃんが言ってくれた。
その言葉のおかげで身が軽くなった。
駅に全員ついた。班長の青木くんが先生に全員そろったことを伝えみんなで電車に乗る。私たちの、班はすぐに仲良くなりあっという間に鎌倉駅に到着した。電車の中でレオくんの視線を何回か感じたのは気のせいだろう。

私たちが今日行くところは。
小町通りだ。初めて鎌倉に来たのは私だけらしくその他の人はなれたように小町通りを歩いていく。人が多い。平日にも関わらずたくさんいる。そんなことを考えていると人混みの中でみんなとはぐれてしまったのだ。
どうしよう―――――。
みんなを探した方がいいのかな。でも下手に動いたらもっとはぐれちゃうかも。不安に押しつぶされてふと涙がこぼれてしまう。誰か、助けて――。
涙を拭っていると後ろから走ってこっちに向かっている人がいる。もしかしてはぐれた私を助けに来てくれたのかな。誰だろう。桜ちゃん?あおいちゃん?それとも青木くん?

ふりかえるとまさかの人物――レオくん。

レオくんが来てくれて急に安心でまた涙がこぼれた。するとレオくんがまさかの行動に。

「心配かけさせるな。このバカ野郎。」

一瞬何がおこっているのかわからなかった。レオくんは私に抱きついていたのだ。けどレオくんが怖いという気持ちは消えていて、助けに来てくれて嬉しいという気持ちでいっぱいだった。

「なんで鎌倉まで来てこんな疲れなきゃいけねぇんだよ。どんだけ走らされたと思ってるんだ。」

レオくんの声。小学生の時から聞いていた声は少し低くなっていた。身長も小学生のときは私と同じくらいだったのに。今では見上げるほど大きくなっていた。レオくんがつぶやく。

「ごめん...」
「俺じゃねぇ。」

え?なんの事?私がぽかんとしていると今度ははっきりと私の目を見て言った。

「だから俺じゃないんだよ。黒板に書いたの。」

私は頭が真っ白になった。