欲しいものがあった。

抱きしめてくれる両親。

健康な身体。

君が笑っている場所。

僕に笑いかけてくれる居場所。

全ては手に入らなかったけど

君は僕に居場所を与えてくれた。

だからそんな君が大好きだった。

君は僕で僕は君。

僕達は似ていた。

愛していたからこそ愛されていたからこそ

忘れられなくて痛かった。

いつも一緒に居たからこそ苦しかった。

いつだったかな。

「後、1年でしょう。」と

医者から言われて

改めて自分の時間はもう少ないと実感して

世界が真っ暗で毎晩泣いていた。

独りぼっちになるのが怖かった。

みんなの見つめる視線が怖かった。

同情や憐れみその全てが怖かった。

寒くて暗いのは怖かった。

だから、病気で死ぬぐらいなら

自分で死んでやるなんて思った事も

あったけれど。

直前になって君の姿が浮かんだんだ。

唐突の別れは、挨拶のない別れは。

辛いから。悲しいから。

立ち直れない傷を遺すから。

僕が1番それを知っている。

だからもう笑おう。

全て飲み込んで。

1度光が消えたとしてもまた灯せるように。

きっと大丈夫だから。

今は悲しみのどん底で

泣いているだけかもしれないけれど、

誰かと手を取り合えばきっと笑えるから。

君は弱くて繊細だけれど

無理に変わらなくていいから。

そんな君を全部受け止めてくれる人を

探せばいいから。

無理に強くならなくていいから

生きている君こそが強くて美しいから。

生きていること自体が強いんだから。

本当は君が辛い時苦しい時は、

僕が傍にいたかった。

重たい物を背負ってあげたかった。

君と沢山心を通わせて生きていたかった。

悲しいこと嬉しいことを

沢山繰り返して歳を重ねたかった。

君の初めては僕が良かったし、

僕が体験させてあげたかった。

君が僕を笑わせてあげたかった。

君に僕を忘れて欲しくなかった。

僕は君と生きていたかったけれど

絶対に守れない約束なんて

悲しいだけだから。

僕の願いは君を苦しめるから。

僕は暗くて寒い場所で

蹲っているままでいいから。

だから最大限のエゴで君に願うよ。

「君が笑えていますように」