「11万円分、全部馬券に?」
「ああ…10万全てすっちまったけ
どな…」
まただ。
さっきから父親は、しきりに10万
と繰り返しているが…
「11万だろ?」
「いや、10万だ。」
ここまできて1万円隠した所で、
たいして意味があるとも思えない
。という事は……
誰か他の人物が1万円せしめたの
か?
それとも真紀子の言うように、犬
を追いかけ回してる時に落ちたの
か………いや、待てよ?
茂男は記憶を遡ってみた。
あれは確か10年前―――
は遡りすぎなので、十数時間前。
真紀子の顔には似合わないラブリー
な部屋での出来事を、コマ送りでゆ
っくり思い出してみる。
お札を数える真紀子。
守銭奴さながらに数える真紀子。
強欲ババァのように数える……
前に、輪ゴムを外してなかっただ
ろうか?
そうだ。
札束には輪ゴムがしっかりとかか
っていて、ゴムの跡がくっきりつ
いていた。
それなのに1万円だけどこかに飛
んでいくなんて事があり得るか?
いや、ない。
結果―――――
犯人は、この家の中にいる!
