父親が持って来た紙袋に入ってい
た現金は、25万円。
咲坂 夜瑠のテレカは、相場で約4万
円。
合計29万円也―――
「1万円足りないぜ!
どこかに落っこちてないか?
ベッドと壁の隙間とかさ…」
「え〜?こんなとこに入らないわ
よ…ブツクサブツクサ…」
はっきりブツクサと発音しながら、
口を尖らせ嫌々ベッド周りを捜す
真紀子。
10分近く捜したが、結局1万円は
見つからなかった。
「親が計算違いしてたか、犬がく
わえて走り回ってた時にでも落ち
たんじゃない?
もういいじゃないの。」
うんざりした顔で言われると、こ
れ以上しつこく執着するのも気が
引ける。
仕方ない。
両親が一生懸命、茂男の為に用意
してくれたお金を1万円でも無駄
にはしたくなかったのだが…
今回は諦めよう。
