1・2・3…
守銭奴さながらに、お札を一枚づ
つ丁寧に数えていく真紀子。
「23・24…――25万円ね。」
身代金の請求は30万円。
では、残りの5万円は…?
「なんで…?
なんで俺の咲坂 夜瑠のテレカが入っ
てんの?」
茂男がコレクションしていた、アイドルのテ
レフォンカード。
現代社会であまりお目見えしなく
なったなったテレフォンカードは、今爆
発的人気のアイドルのものとあって
結構なプレミアがついている。
「これ、一枚いくらくらいの価値
があるの?」
三枚入っていたそれは、二枚は普
通に笑顔の夜瑠だったが、残りの
一枚はかなり際どい水着姿。
豊満な乳房と官能的なお尻が、堪
らなく欲望を掻き立てる。
「これとこれは一枚…1万円。
こっちのは2万円…」
「へぇ〜♪たいしたもんね!
それが入ってたという事は…
足りなかった5万円分を、これで
補ったという訳か。」
そんなバカな…
子供の身代金を…テレカで?
悲しいよりも前に、状況を信じる
事が出来ない。
「一応30万円分集めたんだからい
いじゃない!
足りないままにしておく親だって
いるんだし。」
「…そんな親、いるのか?」
「知らないけど…」
はぁ〜っ…と深い溜め息をついた
後、茂男は吹っ切ったように上を
向き、明るい声で言った。
「まぁ25万用意してくれただけで
も良しとしよう!」
