背中から緊張が伝わってくる。
ピリピリとした空気が漂う中で、真
紀子は微動だにせず一点を見つめ
ていた。
暗闇であまり見えない目をよ〜く
凝らし、視線の先を辿ってみると
……
闇に妖しく光る、灰色がかった深
い緑色の二つの目。
真っ黒い風貌。
グルルル…という唸り声。
茂男の身体は、ガタガタと震えだし
た。
物の怪か…はたまた宇宙人か?
それとも犬か…?
うん、犬だ。
「なぁ〜んだ。犬か…」
緊張して固くなっていた肩から、
一気に力が抜けると同時に―――
思い出した。
前世の記憶…ではなく、犬の足の
本数を………
