ピエロの王様


ドアが閉まるのを背中越しに確認し、

兄を丁寧にベッドに寝かせた六華。

白いシーツが兄の体に沿って沈むのを、

ぼぅっと見つめていた。

「あの、六華様の体調は如何ですか?
汗をかいていらっしゃるようですが。」

心配そうな声色に振り返るとメイドが、

眉を下げて六華を見上げていた。

「…ずっと部屋に籠っているからな。
急に動いて疲れたんだ、問題ない。」

六華は上着を脱いで椅子に放った。

「六華様、投げてはいけませんよ。」

「はっ、俺に小言を言うなんて、
お節介な兄貴とアンタくらいだよ。」

六華は楽しげにケラケラ笑いながら、

机の引き出しを開け、鍵を取り出す。

「兄貴に付いてろ、ここの鍵を預ける。
…くれぐれも無くさないでくれよ?」

「後始末なら私が向かいますよ。」

その言葉に六華は首を横に振った。

「いや、死人が出たら胸糞わりぃ。」

深雪の艶やかな金髪の前髪を、

そっと撫で付けて部屋を後にした。

『ガチャンッ』

「…ふふっ。相変わらず六華君は、
素直じゃないですね、深雪君…。」

メイドは泣きそうな笑みを浮かべて、

開かない深雪の瞼を指先で撫でた。