ピエロの王様


「…六華坊っちゃん、
王様がお呼びですよ。」

背後から声をかかり、耳がキンとした。

決して大きな声ではなかったが、

六華は顔を歪めて振り返る。

案の定、声の主はヨボヨボの爺さん。

王の専属の執事である。

「チッ、今日はもう遅いだろう。
明日伺いますと王サマに伝えてくれ。
アンタも早く寝た方がいいぜ。」

「いいえ、本日中にお伺いください。」

失礼致しますと踵を返す爺さん…。

その背中を恨めしく見つめて、

六華はげんなりと項垂れる。

「あの耄碌爺はとうとう時計も、
読めなくなったのかよ。」

六華はゴミ袋を担ぎ直した。

城の外に出て裏庭を少し行くと、

ごみ処理場が見えてくる…。

そこは夜になると真っ暗で足場が悪い。

六華はただ、真っ直ぐ歩いた。

「ふー…23:45、処理完了。」

冷えてきた腕を擦って呟いた。

ここは冬の国、雪が舞い落ちてくる。

六華の吐く息も雲のように白い。

ふと上を見上げると木々の隙間から、

月の光がぼんやりと六華を照らす。

「おい、この袋は漁るんじゃねぇぞ。」

『ホォーッ…ホォーッ』

近くの大木に住む梟が呑気に鳴いた。