「大学どこ行くん」

突拍子もなくデリケートな質問をしてきたのはゴールデンウィーク後の昼休みのことだった。

「東京の私立目指してん」
「東京?なんで」
「憧れるやん、表参道とか」

しばらく私のことをジロジロ見た後、軽く頷いた。

「俺も、俺も東京の私立やで」
「うそ」
「偶然やな」

そう言って晴人はふんふんと頷きながら去ろうとしたから、私はその腕を引き止めた。

「どこ、何大」
「そんなん恥ずかしいから言わんよ」
「デリケートな質問してきといて自分は答えないんやな」

私が顔を覗くと、晴人もヘラヘラ笑いながら「おう、すまんな」とだけ答えた。

その時は本当に教えてくれなかった。

後に、某有名難関私大だと知る。
それは模試の結果を眺めていた時のことだった。

「意外と頭いいんやな」

私が突然声をかけると、驚いたように結果を伏せる。

「見ちゃダメやって」
「分かりやすく落ち込んでたから励まそう思ただけやん」
「E判定や」
「でもまだ1年近くあるやん、私もD判定やで」

少しずつ夏が近づこうとしてた、夏休み入る前。

「落ちんなよ」

突然声のトーンを落として晴人が言ってきたから思わず吹いてしまった。

「きしょ」
「きしょ言うな、真剣に言ってんやん」

ムキになって言うから余計に笑う。

「でもE判定の晴人が言う言葉やないな」
「はいはい、そやな」

照れ隠しのように雑に言いながら晴人はその場を去ろうとする。