私はその場で二十センチほど飛び上がった。


背後から聞こえた女の声――その聞き慣れた声に全身が凍りつく。


「なにしてんのアンタこんなところで」


よりにもよって、もっとも遭遇してはならない人物が私の背後に立っているのだ。


万事休す。


私はゆっくりと振り返った。




「……ちょっと、まーくんの家に用があったから」


「アンタまだ家に帰ってないね?」


「そんなことないよ……」


「じゃあなんでランドセル背負ってんのよ」


「えっと……まーくんに……」


「遊びに行くなら宿題やってからにしろって言ったよね?」


「遊びっていうか……」


「まあいいや。買い物終わって今ちょうど帰るところだから。アンタちょっとこれ持って」



そう言って、母さんは食料品がぎっしりと詰まったビニール袋を私に手渡した。




最悪という名の巨大隕石が私の頭を直撃した気分だった。