年下彼氏の結婚指導

 にっこりと笑えば彼女は顔を赤くして席を立った。 声を荒げるつもりはないけれど、好きな相手を悪く言われて黙っていられる程大人しくもない。
(好き……)
 自分の気持ちを改めて自覚する。
 反対隣の女子がちょっと引いてたけど、最早それどころではない。

(七歳か……)
 だって、もしこのまま惹かれていったら、この年齢差をいずれ彼女は気にするだろうか。

 翔悟は気にならない。
 だって過去七年、それ以上遡ってもこんなに惹かれる相手はいなかった。
 そんな相手にこの先会えるだろうか。
 社会に出て人脈が広がって、その先に年齢も性格もピッタリと合った、一番だと思える相手がいるのかもしれない。
 けれどその間、華子が誰かのものになるのを指を咥えて見ていなければならない。
(それは無理)
 ぎゅっと絞れる胸の痛みに翔悟は顔を顰めた。
 既に過去の男の話を聞くだけで胸が悪くなっている自分がいるのだ。

 それに翔悟からすると、自分が年下というのはプラスでしかない。
 彼女の貴重な時間を全て奪って自分のものにできる。所謂、適齢期というものを過ぎれば逃げようがない。もう諦めて自分にしとけと追い詰められる。
 ちょっと楽しい妄想に顔をにやけさせ、来週から始まる指導研修に思いを馳せた。