二十二歳。
 成人式とは違う、社会人への一歩を踏み出す活動が始まった。
 親に勧められた会社も受験対象には入れていたが、一社会人となる最初の活動は自分で決めたかった。

 それでも会場に入れば翔悟は女性から視線を集めてしまう。ライバルからも会場の人事担当からも。
 彼女たちの熱視線に寒気を感じながら。
(本当、このまま誰とも添い遂げられないかもな……)
 今は別にいい。でも先の事を考えると一抹の不安が胸を掠める。
 そんなちょっと暗い自分の未来に溜息を零したところで。

 華子に出会ったのだ。

 会社説明会のあの日。
 スタッフカードを首から下げた彼女は、笑顔一つ見せずに就活生たちに課題を言い渡していた。
 これには翔悟も面食らった。
 今迄の会社で人事担当は皆フレンドリーだった。そこで会社は学生の心を掴み、この会社に入りたいと思わせると思っていたのだけれど……

 華子の指導は妙に現実的だった。
 この会社はこう言う雰囲気で働く人たちで纏まっているのだろうか。真面目で真摯、手を抜かないといった印象。

 学生の身分ではハードルが高いと感じてしまうかもしれない。けれど翔悟は、この飾らない華子の雰囲気に惹かれた。
「この会社」じゃない。この人と一緒に働きたいと、純粋に思った。