「……ずっと観月さんに協力して貰ってたんです。彼女、部内での影響力強いから。因みにお礼はアレです。お陰でこの一週間、ランチデートに付き合わされて大変でしたよ。俺だって華子さんとイチャイチャしたかったのに……」
 
 混乱する華子に翔悟がこそりと囁いた。
 確か去年の新卒君と翔悟は同じ出身大学で……いや、何か不適切な発言が聞こえたような気がするが私は何も聞いていない。
 それよりも、たった一週間で指輪を贈らせた結芽が凄すぎる。

「……でもっ、」
 そんな思考に囚われながらも、込み上げる思いは誤魔化せない。
 華子は戦慄く口元に手を当てて、歪む顔を必死で隠した。

「泣かないで下さい」
 笑うような慰めるような口調に、華子の視界が益々滲む。
「泣いて、ない」
 ぽん、と背中に回された腕に包まれれば、鼻腔を花の香りが擽った。
「そうですか」
 くすっと漏れる声すら温かい。
「うん」
 優しい声音に身を任せ、華子はそっと瞼を閉じた。