そうして宴はあっという間に、たけなわとなってしまった。
「廉堂君」
 愛らしい声音と共に、結芽が花束を抱えこちらに歩み寄る。
 白と青を基調にした、どこかシックな雰囲気の花束は、きっと翔悟をイメージしたものなのだろう。
 笑顔の結芽が翔悟に近付く姿に、胸が鈍く軋む。

 華子は慌てて席を立ち翔悟と距離を取った。
 華子の気持ちを知っていても、彼女として、こんな雰囲気は面白くない筈だ。
 そんな葛藤する華子を他所に、結芽は明るい声で花束を抱え直した。

「私が買いに行って来たんだけど、渡すのは仁科さんの方がいいよね? はい、仁科さん。お願いします」
「へっ?」
 バサリと目の前に掲げられた花束と、結芽を交互に見て、華子は恐る恐るそれを受け取った。
 敵に塩を送るというヤツだろうか。
「う、うん。ありがとう……?」
 華子は花束を見て、しみじみと溜息を吐いた。

 自分の気持ちを口にするタイミング。
 多分これが一番いいと思った。
 華子は表情を引き締めて、改めて翔悟を仰いだ。
 心得た彼は、華子に合わせて立ち上がってくれている。