年下彼氏の結婚指導

 このまま何も告げず別れれば、華子はきっと溜息を吐き、思いを引き摺る日々を送る。
 事実、今日堅太と会って、自分なりに別れが出来て気持ちが軽くなった。
 翔悟に既に決められた相手がいるのなら、これ以上深みに嵌る事は無い。だったら尚更。

(……けじめ、大事かも)
 このまま母の期待に押し切られる形でお見合いをして、無難な相手と結婚をする。その時この気持ちを思い出さないだろうか。いつか後悔しないだろうか……
(言いたい)

 自分の気持ちを伝えたい。
 年下の彼に。
 恥ずかしくもある。でも、年齢を自覚すれば……勇気を持ちたい。
 どくんと胸が大きく鳴った。

 緊張と不安が胸を占める。
 その後の別れを思えば胸が苦しいが、でもきっと、翔悟は笑ってくれるような気がした。
 
『ありがとう、嬉しいです』

 その後ごめんなさいと言われても、泣いてしまっても、華子はやっぱり嬉しいだろうと思う。思いは遂げられなくても、自分の気持ちを大事にしたい。先に進む勇気を尊重したい。

 キュッと前を向いて、華子は送別会の会場へと足を向けた。