年下彼氏の結婚指導

 ここで華子が自分など取るに足らないからと論じても、彼女は納得しない。結芽は多分、華子にきっちりと玉砕して、諦めて貰いたいのだ。
 自分の為に人の気持ちを犠牲にする。
 それは残酷だけど、推し量れないものに身を委ねる以上、自分を守る術とも言える。

 黙りこくる華子をぎゅっと睨んで、結芽は近くの花屋で足を止めた。
「適当に選んで行くので、先に行ってて下さい」
「……そう」
 背中から投げつけるように言われ、頷いた。見えないだろうけど、そのまま黙って踵を返す。
 すると後ろ手で組んだ彼女の指に、キラリと光るものが視界に入り息を飲んだ。

 さっきまでは無かった。
 眩く光るそれは、もしかしたら敢えて、就業時間が過ぎた今、付けたのかもしれない。
(ああ……)
 じわりと目尻に浮かぶ涙を瞬きで散らせば、結芽に言われた言葉が追いかけてきた。

 いくじなし。

 年が何よ。

 けじめくらいキッチリつけなさい。

 そう断じる事が出来るのは、若くて可愛い子の特権だ。

 でも。

 確かに、とも思う。