年下彼氏の結婚指導

 吐き捨てるような結芽の言葉に華子は息を呑んだ。
「仁科さんの好きって何ですか?」
「……観月さん」

 何だ急にという思いが確かにある。
 けれどそれ以上に結芽の言葉には衝撃を受けた。
(周りには、そんな風に見えていたのかな……)
 堅太と別れて落ち込んだ事も、翔悟に密かな思いを抱いている事も、華子が取るに足らない日常の一つをこなしているようにしか見えなかった。

 確かに気取られないように注意してきたけれど、心はそれだけではなかったのに。
「……勝手な事を言わないで欲しい。私の気持ちは私のものでしょう?」

 込み上げる不快感を押しやって、先輩の顔で窘めれば結芽はムッと顔を顰めた。
「気持ちを整理しないまま引き摺るのって建設的じゃないんですよね。もうすぐ翔悟君がいなくなって、仁科さんどうするんですか? 恋心を持て余したまま呆けながら仕事するんですよね。……そんなの流石に気になりますから」
「それは……」

 言いかけた言葉を飲み込む。
 結芽は華子の気持ちに気付いて、それを煩わしいと感じている。どの目線かといわれたら、思い当たるものは一つしかない。

(……そっか。あなたたち……上手くいったのね)
 どこか必死な結芽に、小さく息を吐く。
 魅力的な相手を恋人に持つ不安……今華子はそれをぶつけられているのだ。