それでも華子は結芽と翔悟の事が気になって仕方がなかった。
 今まで視界の端にも入れて無かったのが嘘のように。もう既に、翔悟を見えなくても意識してしまっている。

 今も親しげに語らう結芽と翔悟の横顔が、自然と目に入る。
(……いいな、お似合いだ)
 羨ましくて切なくて仕方ない。勝手に期待して、失望する。
 こんな気持ちになるなら、もう誰にも心を許したくないと思うのに……

 泣いても笑っても今日が最後で、部内皆で彼を労って、お別れをする。

 流石に最後くらい部内の交流を深めなさいと、翔悟には一日自由にさせている。元より彼は真面目だし、今まで華子がみっちりとしごいてきたので、それで丁度いい塩梅だ。

 そしてお昼時間。
 華子は慌ただしく席を立った。
 結芽と翔悟が仲睦まじく昼食に行く姿なんて、とても見られない。

 このまま少し遠くに足を伸ばそうかと腕時計を眺めていると、急に視界が陰った。