適齢期に、結婚を考えた恋人から振られたせいかもしれない。
 まあでもそれは、彼は違っていた、というだけだ。
 元彼とは二十八歳の時にお別れしている。彼は四歳も歳下で、当時二十四歳だった。
 
 華子は落ち着いた容姿のせいか、年下ばかりに声を掛けられる事が多かったのだが……
『結婚するなら可愛いお嫁さんがいいんだ』

 酔って吐いた彼の本音にポカンとした。
 自分が可愛い系でない事なんて百も承知だ。

 肩より少し長い真っ黒な髪に、平均より高めの身長。
 染髪も手の込んだ化粧も面倒で、容姿も性格にも色気は無い方だと自負している。
 褒め言葉は「日本人形」だが、恐らくその心は「こけし」だと踏んでいる。
 華子は思わず俯いて、酒の勢いのまま紡がれる彼の言葉に耳を傾けた。
『華子はさ、隙が無いんだよな。それに……』

 それから彼は延々と心境を吐露してくれた。
 元々自分自身に自信がなくて、甘えやすそうな華子に声を掛けただけ。……華子の事は特に好みじゃない、とまで吐き出してくれた。