年下彼氏の結婚指導

「もー。仁科さんったら、やりすぎですよ? 廉堂君、大丈夫ー?」
「あっ、ごめ……」
 翔悟とのやりとりにのめり込んでいた華子はハッと我に返った。同じように緊張が解けたらしい翔悟は首を傾げ、笑っている。
「そうですか? 僕には仁科さんの指導、有り難いです。凄く勉強になりますから」
「……っ」

(ちょっ、それ反則)
 いつもの笑顔に色味が差して、凄みが増している。
 そんな翔悟の心からの賞賛に、華子は思わず照れてしまう。
(上司を立てる事も忘れないなんて、どこまで完璧なのかしら)
 内心ででれでれしていると、結芽がキャッと手を叩いた。

「廉堂君エライー、真面目だねえー。よしよしお姉さんがご褒美にお昼を奢ってあげるー」
「あはは、嬉しいです。ありがとうございます」
 はしゃぐ結芽に翔悟は笑顔と応じている。

 頭が優秀なだけでなく、人付き合いや対人関係にも問題なさそうだ。
(本当、隙のない子だなあ……)
 華子はそのスペックに舌を巻いた。

「仁科さんも……」
 そう振り返る翔悟に華子は手を振って遠慮した。
「私は少し用事を片付けたいから、お二人でどうぞ?」
 結芽の応援をする訳ではないが、隙間時間に片付けたい仕事がある。
 困ったように眉を下げる翔悟と満面の笑みを浮かべる結芽に笑いかけ、華子はデスクに向き直った。