その言葉に華子(はなこ)はポカンと口を開けた。
 駄目だし、無理だと思っていた。
「……っ」
 戦慄く口元に手を当てて、歪む顔を必死で隠した。

「泣かないで下さい」
 笑うような慰めるような口調に益々視界が滲んでしまう。
「泣いて、ない」
 ぽん、と背中に回された腕に包まれれば、鼻腔を花の香りが擽った。
「そうですか」
 くすっと漏れる声すら温かい。
「うん」
 優しい声音に身を任せ、華子はそっと瞼を閉じた。