怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


またしても沙綾の言葉を躱し、湊人に話を向ける拓海に非難の声をあげる。

「拓海さん!」
「べんと! まーま、たべりゅ! はーく!」
「べんと? あぁ、弁当があるのか。どんな弁当か、俺にも見せてくれるか?」
「うん! まーま、かしてっ」

結局、ダイニングテーブルに場所を移し、沙綾の作った弁当を三人で食べることになった。

足りなくならないよう多めに作ってきたとはいえ、どれもこれも湊人に合わせて作ったお子様用メニューで、拓海に食べさせるのは申し訳ない。

「すごいな、キャラ弁ってやつか」
「あの、拓海さんはご自身でなにか頼んで下さい。きっと足りないでしょうし、味付けも子供向けなので」
「大丈夫。沙綾の料理がうまいのは知ってるから」

目を細めて微笑まれ、久しぶりに自分に向けられた笑顔に心が浮き立つ。

(深い意味はない。一方的に契約結婚を終わらせたのは彼なんだから。きっともう私から恋愛感情を向けられていないと思って、安心して気安く接してるんだ……)

ときめく自分自身を戒めるようにぎゅっと目を瞑り、高鳴る心臓を落ち着かせた。

食事を終えると、満腹になった湊人はうとうとと船を漕ぎ出す。

向かい合わせに膝に乗せ「いい子ね、湊人。ねんねしようね」と背中を叩いてやると、あっという間に夢の世界へ旅立った。