怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


渋々後部座席に乗り込むと、意外にもチャイルドシートが取り付けてあった。

そのまま拓海の家へと車を走らせること二十分。

以前沙綾が住んでいたマンションとは違う、低層レジデンスに着いた。

博物館と見紛うような門構えと緑豊かな敷地、石造りの重厚な外観は、ドイツでふたりで住んでいたアパートを彷彿とさせ、気持ちがざわつく。

与えられたタワーマンションも分不相応なほど豪華だと思っていたけれど、ここはその比ではないほど高級感あふれる空間だった。

ガラス張りのエントランスホールもラグジュアリー感が漂い、子供を連れていると場違いではと恐ろしく感じるほど。

案内されたのは最上階。

玄関を入って右側の扉を入ると、四十畳はあろうかという広々としたリビング。白木目のフローリングに、ソファやダイニングテーブルがベージュなどナチュラル系な色合いのせいか、日当たりのよさも相まって、とても明るく清潔感のある雰囲気だ。

大きな壁掛けのテレビに、沙綾の背丈よりも高い観葉植物、アーチを描くフロアスタンドがサイドテーブルの横に配置され、モデルルームのように洗練されたおしゃれな部屋。

しかし沙綾の視線を奪ったのは、リビングの素晴らしいインテリアでも、奥のウッドデッキの広いバルコニーでもなく、大きなL字型のソファの対角線上に作られたキッズスペースだった。

二段ベッドのような高さのジャングルジムにブランコやすべり台までついている木製の室内用遊具の隣には、ロケットを模したカラフルな子供用のテント。

プレイマットの上にはぬいぐるみや、湊人も大好きなフラッシュライターの変身ベルト、必殺武器である電灯セイバーまで置いてあった。