怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


「俺は拓海だよ」
「たくみ?」
「そう、よろしく。湊人くんはブーブー好き?」
「うん、しゅき」
「そうか。じゃあこのブーブーに乗って遊びに行かないか? 公園みたいにすべり台もあるし、フラッシュライターのおもちゃもあるぞ」
「らいたー! のりゅ! まーま、らいたー!」

大好きな車とヒーローにまんまと乗せられ、湊人は初対面の拓海についていく気まんまんで沙綾を見上げてくる。

元々人見知りや場所見知りの少ない湊人だが、普段接することのない男性を怖がらないばかりか、あっさり懐いてしまうなんて予想外だ。

湊人が大物なのか、それとも、本能で父親だとわかっているのか……。

「……卑怯です」

まさか自分ではなく、湊人から懐柔して話し合いに持ち込まれるなんて思わなかった。

「なんと言われようと、俺は君と話がしたい」

そもそも、なぜ拓海がそこまでして自分に構うのかがわからない。

湊人が彼の息子だとバレていないのだから、思いあたりといえば、マンションを出る際、鍵を拓海本人ではなくコンシェルジュに預けて出てきたことくらいだ。

なにか不備があったとは思えないが、一度だけ応じてこれっきりにしてもらおう。