だけど、あと一年もすれば幼稚園に通いだし、周りの友達との差に気付き始めるに違いない。
その時、父親についてどう説明したらいいのだろう。
妊娠に気付き産むと決意して以降、何度も自問してきたけれど、いまだに明確な答えは出せないでいた。
「湊人。今日はね、公園の前にちょっとお話してもいいかな」
「おはなしー?」
「うん、会おうねってお約束してる人がいるの。ママその人とお話したいんだけど、いい子にしてられるかな」
(ママの、お友達……? なんて説明したらいいんだろう)
頭を悩ませている間にも、湊人は玄関から靴を持ってきて早く出掛けようとせがんでくる。
「ゆーき?」
「ううん、違う人だよ」
「なぁんだー」
残念そうな声を出す湊人だが、夕妃に会ったことはない。
正確には赤ちゃんの頃に何度か会っているが、湊人は覚えていない。
ちょうど拓海のマンションを出る頃、夕妃は劇団の拠点がある関西に住まいを移したため、気軽に会えなくなってしまった。
それでも頻繁に電話はしているし、沙綾が夕妃の出演する舞台のDVDを家で流しているため、湊人も彼女を“ママと仲良しのゆーき”としてちゃんと認識しているようだ。
湊人の誕生日あたりはちょうどオフが重なるため、一緒にバースデーパーティーをしようと計画している。



