怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


名前や出身地から、趣味、特技、好きな異性のタイプなど一通り記入し、受付でオーダーしたオレンジジュースを受け取って喉を潤す。

会場内をざっと見回すと、三十名ほどの男女が参加していた。

男性はスーツ姿、女性は結婚式のお呼ばれのようなパーティードレス姿でとても華やかだ。

程なくして進行のスタッフがパーティーの開会を宣言し、簡単な注意事項や趣旨説明がなされた後、持ち時間三分のトークタイムが始まった。

時間が来ると、向かいに座る男性が順番に隣の席に移動していき、一周すると全員と顔を合わせるシステムは、婚活パーティーの定番らしい。

三分という時間は短いようで、興味の薄い沙綾にとっては長く感じる。

何度も同じような自己紹介を聞き、結婚観を聞かれては困って言葉に詰まるの繰り返し。

真剣に結婚相手を探しているだろう相手に対し、どんどん申し訳なさが募っていく。

(あとふたりで終わり……)

なんとか笑顔を貼り付けたまま向かいに腰掛けた相手に会釈をするが、顔をきちんと見る気力すら失われていた。

惰性でプロフィールカードを交換し、受け取った紙に視線を向ける。

「よろしくお願いします」

低く艶のあるいい声だが、若干の疲れが滲んでいるような、億劫に聞こえるトーンだった。

なんとなく親近感が湧いて顔を上げ、目の前の男性を見て驚いた。