怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


「君を選んでよかった」
「拓海、さん……?」
「BEL電力のバカ息子に、どこを触られた?」
「え?」
「悪かった、怖い思いをさせて」

耳元で囁く拓海の声は悔恨が滲み、背中に回る腕に力が込められる。

「嫌になっていないか。外交官の……俺の妻でいるのが」
「いいえ!……あっ」

咄嗟に大声で否定してしまい、沙綾は慌てて彼から距離を取ろうと腕を突っ張った。

これではまるで、彼の妻でありたいと自ら望んでいるように聞こえる。

そんなこと拓海は求めていないはずだ。

彼はきっぱり言っていたではないか。

『恋愛には興味がない』と。

身体を押し返そうとしたが、逆にその腕を掴まれ、至近距離で見つめられたまま、拓海の唇が自分の名を形取りながら迫ってくる。

「沙綾」
「ん……」

一瞬だけ触れた唇は、離れたかと思うとすぐにまた重ねられ、何度も繰り返されるうちに徐々に深さが増していく。