怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


「綺麗だ」
「ありがとうございます。ちょっとお高くて迷ったんですけど、やっぱりこの色合が綺麗ですよね」
「着物もだけど、沙綾が」

熱い眼差しで見つめられ、緊張で負荷が掛かっていた心臓がさらに悲鳴をあげる。

「あ、ありがとう、ございます。あの、拓海さんも、素敵です」
「Danke」

光沢のあるパーティースーツを着こなす拓海は、体格のいいドイツ人と並んでも見劣りしないほどカッコよく、周囲の人々の目を惹く。

沙綾の白藍色の着物に合わせて、胸元のチーフは同系色の青を選んでいるのが、なんとも擽ったい。

「変な男に声を掛けられても無視しろよ」
「こんな場所に変な人なんていませんよ。見て下さい、すごい警備の数」
「……そういう意味じゃないんだが。まぁいい、行こう。まずは黒澤大使のところからだ」
「はい」

腰に手を添えられ、沙綾は背筋をピンと伸ばす。

拓海はこういったレセプションのために沙綾を結婚相手に選んだのだ。失敗する訳にはいかないと気合を入れた。


まもなく還暦を迎えるという黒澤大使に続き、訪独している外務大臣や大臣政務官に挨拶を済ませると、続いてドイツの要人たちとも交流を図る。