怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


その後、境界監視塔や、ホーネッカーとブレジネフのキスを描いた有名な壁画のあるイーストサイドギャラリーを見てから、今日の最大の楽しみであったブランデンブルグ門へやって来た。

「ここです! ここでエリスが待っていて、向こうからアンドレアスが来るんです! 壮大な交響曲が流れる中、完全にふたりの世界でぎゅーっと抱きしめ合うんですよー!」

古代神殿風の作りの大きな門へ、沙綾はぴょんぴょんと飛び跳ねるように近付いていった。

あの場面を思い出すだけでも興奮が止まらない。

観劇した日の夜、疲れているであろう夕妃本人にも電話で三十分は観劇の感想を語り、「明日も舞台だから悪いけど寝かせて」と呆れられたほど。

「“たとえ何度高い壁に阻まれたとしても、君への愛は永遠に潰えることはない”っていうセリフが、本当にカッコよすぎて!」

そして、エリスは言うのだ。

「“あなたが壊してくれた壁の向こう側の景色を、私は一生忘れないわ……!”」

舞台のクライマックスのセリフを口にしてはしゃいでいた視界に、こちらを驚いたような顔でじっと見つめている拓海が映る。

「はっ……! す、すみません。興奮しすぎて、私ってば、はしゃぎすぎてますよね……」

拓海の視線に我に返り、冷静になった沙綾は、首筋まで真っ赤になった。

ミソノの話題になると、ついオタク感丸出しで周りが見えなくなる。