怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


「君は?」
「やっとこっち向いてくれたぁ! 小山内ひなのです。吉川さんと同じチームでぇ」
「あぁ、やはり君か。沙綾の出来の悪い後輩というのは」

さりげなく腕に触れていたひなのの手を振り払うと、拓海は続けた。

「君には礼を言わないと。沙綾のような魅力的な女性と付き合っていながら、後輩をホテルに連れ込むような最低の男を引き取ってくれて」
「えっ……」
「あぁ。沙綾の名誉のために言っておくが、彼女が君や浮気男の悪口を言っていた訳では無いよ。客観的事実を聞いた俺が、そう思ったというだけだ」

先週末、お酒を飲みながら職場の愚痴を聞かせた覚えはあるが、ところどころ記憶が曖昧で、どんな風に話したのか想像もできない沙綾はとても気まずい。

一方ひなのは、まさか目の前の極上の男が、自分に見向きもしないで沙綾を褒めるとは思わず、顔を歪めて笑った。

「吉川さんなんて、ただ偉そうに英語喋って仕事するくらいでしょ? 女としての魅力なんてないんだから、浮気されたってしょうがないっていうかぁ」
「一年も付き合って沙綾の魅力に気付かないなんて、その男、余程能無しなんだろうな。まぁ君を選ぶくらいだ、似合いなんじゃないか」
「ちょっとぉ、どういう意味⁉」

ぎゃあぎゃあ騒ぐひなのをよそに、ここまで拓海の登場に知らぬ存ぜぬを決め込んでいた雅信だが、さすがに彼の言葉にプライドが傷ついたのか、沙綾をギロリと睨んできた。