続いて沙綾ものろのろと起き上がる。

こんなに二日酔いになるほど飲んだのははじめてだった。

薬を受け取ると、じっとこちらに視線を投げ続ける拓海を見つめ返す。

「あの……」
「君を妻としてドイツに連れて行く」

その言葉と眼差しに息をのむ。

力強い瞳に囚われ、沙綾はやはり断るべきなのではという主張を手放してしまった。

拓海の黒曜石のような瞳には、そうさせる力がある。

「それから」

拓海が男らしい節ばった長い指でこちらを指して、口の端を上げる。

「朝から眼福だが、今すぐ襲われたくないのなら、シャワーを浴びて着替えることを勧める」

指の先を視線で追って下を向くと、身につけているのは上下の下着のみというあられもない姿だった。

「きゃあっ!」

慌ててシーツを手繰り寄せて胸元を隠した沙綾は、昨晩の自分の醜態を呪うほど後悔した。

(私、最悪! しばらくお酒は飲まない……!)

真っ赤になった顔をシーツに埋めて丸まっている沙綾を横目で笑い、拓海は広く豪華な寝室を出ていく。

「ちゃんと薬飲めよ」

ありがたい言葉を掛けられながらも、残された沙綾はしばらくベッドから起き上がれないでいたのだった。