(たった半日でこの疲労感。一日中仕事をしているよりも大変だ。本当に沙綾には感謝しかないな)
湊人が可愛いのには変わりないが、やはり育児は想像を超える労力を要する。
大人とは違い、まだ言葉もしっかり通じない子供を相手に食事の世話や寝かしつけをして、一緒に遊ぶにしても危険がないように常に気を配り目が離せないとなると、気の休まる瞬間がない。
この生活を二年近くもひとりでこなしていた沙綾を思うと、改めて己の不甲斐なさを痛感すると同時に、彼女へ対する尊敬と信頼、愛情が増していく。
歪な形のハンバーグはあとは焼くだけ、レタスときゅうりとプチトマトだけのサラダが完成した頃、沙綾が帰宅した。
「ままだー!」
ハンバーグのソースを作る頃には完全に飽きてしまった湊人はキッズスペースで遊んでいたが、持っていたおもちゃを放り出して玄関へ駆け出す。
考えてみれば、保育園に通っていない湊人が半日も沙綾と離れていたのははじめての経験で、不安もあったのかもしれない。
「ただいま、湊人。いい子にしてた?」
「してたのー。みなとね、ぱぱとおりょうりしたの」
「え? お料理?」
「そう。まま、よおこぶ? うれしい?」
廊下から聞こえてくる親子の会話を微笑ましく聞きながら、拓海はエプロンを外して出迎えた。