「沙綾も会った弟の大地は、父親と血が繋がっているのかわからないんだ。母が男と出ていったのは出産してすぐ。きっと、もっと以前から関係はあっただろうからな。俺は小学生だったからなんとなく察していたけど、成長して母親の話を知った大地は荒れたよ」
沙綾は以前マンションに訪れた大地の顔を思い浮かべた。
『あなたは俺の母親と同じだ。自分さえよければ平気で裏切る』
そう言い放った彼の表情は、家族を裏切った人物への嫌悪感が滲み、悲痛なほどだった。
「DNA鑑定で調べると大騒ぎした時に、父親が大地に言ったんだ。『たとえ血が繋がっていなかろうと、大事な息子には違いない。お前は血の繋がりがないと俺を父親とは思えないのか』って」
「素敵なお父様ですね」
「その当時、俺は二十歳になったばかりだったが、父のような大きな男になりたいと思ったよ」
自身の親を褒める発言に照れくさくなったのか、小さく苦笑してから続けた。
「結局調べずに今日まできたが、俺もそれでいいと思ってる。事実がどうであれ、家族であるのに違いない。そもそも互いを想い合って家族になる夫婦だって、血の繋がりはない」
「そうですね」
沙綾は大きく頷く。
「だから、もう一度沙綾を手に入れようと決めた時、必ず子供ごと愛してみせると覚悟を決めた。父にできたのなら、俺もしてみせると」
拓海の話を聞いた沙綾は、改めて深い愛情で包まれている喜びに胸をときめかせた。



