「ひとつ、聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「拓海さんはずっと湊人の父親は自分じゃないと思ってたんですよね。それなのに、あんなにもたくさん湊人のためにおもちゃを準備してくださって」
再会した次の日にこの部屋に入った時には、すでにキッズスペースは完成していて、ベビーガードも完璧に取り付けられていた。
背の高いすべり台付きのジャングルジムは湊人のお気に入りで、特に雨で外に遊びにいけない日などは大活躍してくれる。
きっと忙しい合間を縫って用意してくれたのだろう。まだ会ってもいなかった湊人のために。
「急に父親になることに、不安や戸惑いはなかったんですか?」
母親である沙綾でさえ急な妊娠に驚き、覚悟を決めるのに時間を要した。
お腹の中で育つ命の重みを感じながら少しずつ母になる準備をして、それでもまだ理想の母親像には程遠い。
なかなか寝てくれない時、どうして泣いてずぐっているのかわからない時、赤ちゃん相手にイライラしてしまったことも多々ある。
お腹を痛めて生んだ子にさえそうなのだから、再会当初の拓海の想いや覚悟はどれほどだったのだろう。
「そうだな。……俺の母親の話はしたよな」
頷く沙綾に、拓海はゆっくりと噛みしめるように話し始めた。



