大人だって新しい環境に慣れるには時間がかかる。焦らずゆっくり進もうと、沙綾は気持ちを切り替えた。
「よーし! じゃあお風呂に入ろう」
「えぇー」
「ほら、お風呂入らない子はこうしちゃうぞー」
「きゃはははっ」
抱きしめていた湊人をこちょこちょとくすぐってやると、全身を捩りながら大きな声をあげて笑う。
ようやく本来の笑顔が戻った湊人と一緒にお風呂に入り、絵本を読んで寝かしつけが終わったのが夜の九時を過ぎた頃。
すやすやと眠る湊人のふくふくのほっぺにキスをして、そっと寝室を出てリビングへ行くと、お風呂上がりの拓海がソファでスマホを片手に水を飲んでいた。
「お疲れ様。湊人はぐっすり?」
「はい。なんだかんだお風呂ではしゃいだので、疲れてすぐ寝ちゃいました」
「そうか」
「なにか調べ物ですか?」
真剣な顔でスマホとにらめっこしていたのでそう問いかけると、拓海は画面をこちらに向けてきた。
「イヤイヤ期、パパの育児の関わり方?」
沙綾は彼の隣に腰を下ろしてスマホを覗き込むと、“新米パパが陥りがちなNG子育て”や、“奥さんへの感謝を忘れず”にといった見出しが表示されている。



