申し訳なくて肩を竦めて拓海を見上げると、小さく首を振って微笑んでくれた。

「少し仕事してくる。これからは一緒に育児をすると言ったそばから、任せきりで悪い」
「いえ、拓海さんが努力してくれているのはわかってますから」

不夜城と揶揄されるほど忙しい職場で働く拓海だが、土日はなるべく家にいられるように仕事を調整してくれている。

家で一緒に食事をとるのはもちろん、公園や買い物に行くにも三人で出掛け、湊人との距離を縮めようと考えているのがわかるがゆえに、この状態がもどかしい。

「ありがとう。じゃあよろしく」

頬に軽いキスを落として自室へ下がる拓海を見送り、沙綾は湊人に向き直った。

「湊人」
「……まま、おこった?」

いけないことを言ってしまった自覚はあるのか、湊人はもじもじしながら上目遣いに見てくる。

彼と同じ目線になるよう腰を下ろすと、感情的にならないように一呼吸置いてから、ゆっくりと話した。

「怒ってないよ。でも悲しい」
「かなしい?」
「うん。湊人と拓海さんが仲良くないの、ママ悲しいな」
「えーん?」
「うん。えーんしちゃいそう」

すると湊人は慌てて首をぶんぶんと横に振る。