「拓海さんのその目で見つめられると、なにも言えずに頷きたくなっちゃう」
可愛らしい文句に緊張が解れ、自然と笑みがこぼれる。
「それはいいことを聞いた。プロポーズのいい返事がもらえるまで、ずっと見つめながら口説くとしよう」
「やっやめてください! 心臓がどうにかなっちゃう」
「それなら早く返事をするんだな」
「横暴ですよ」
「多少強引にいかないと、沙綾は逃げるだろう?」
頬を赤くしながら口を尖らせる沙綾がたまらなく可愛く、我慢できずにその唇にキスを落とした。
「んっ」
「返事は? 奥さん」
彼女が口にした通り、熱く見つめて頷きたくなるように誘導する。ウィークポイントはとことん攻めて落とす。これも交渉術の一種だ。
そんなことは関係なく、愛しい沙綾をずっと見つめていたいだけなのだが。
自分の甘すぎる思考回路が可笑しくて笑うと、同じく呆れたように笑った沙綾が「さすが有能な外交官です」と肩を竦めた。
「私……。拓海さんが好きです。帰国してからもずっと、忘れられなかった。拓海さんのお仕事、もっと勉強して理解できるように頑張ります。だから……もう一度、あなたの妻にしてくれますか?」
ようやく。ようやく手に入れた。拓海は告げられた沙綾の言葉を噛みしめる。



