怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


「おはよう、湊人。久しぶりだね、わかるかな?」
「んん?」

首を傾げながら夕妃を見つめていた湊人が、なにかを思いついたようにパッと笑顔になった。

「あっ! ゆーき!」
「お! 正解! よくわかったね」
「あのね、ままとてれびでみてるの! ままとなかよしのゆーきだ!」

嬉しそうに説明する湊人を膝に乗せたまま、沙綾はそばに立つ拓海を見上げた。

「ユウキ……?」

拓海は呆然とした顔でその場を見つめている。その理由は、おそらく先程の彼の言葉にあるのだろう。

『彼女は渡さない。どんな事情があるにせよ、俺は同じ男として君を……』

向けられた視線に気付いたのか、拓海は沙綾のそばに膝を付き、混乱した頭を必死に働かせようとしているのが見て取れた。

「……沙綾。話がしたい」

黒曜石の瞳が輝きを増しながらじっと見つめてくる。

わずかに震える指先が沙綾の頬に触れると、拓海の戸惑いと緊張が伝わる。夏だというのにその指先があまりに冷たくて、沙綾は咄嗟に彼の手を握った。