怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


「夕妃。私、間違ってたのかな」

先程大地から聞いた話を夕妃に聞いてもらいながら、自分の中に芽生えた気持ちも打ち明ける。

「関わりを絶ちたかったのは向こうだと思ってたのに、彼の弟さんの話を聞いたらわからなくなった……」

ずっと意識して見ないようにしてきたことが、急に現実となって目の前に突きつけられた気分だった。

急な帰国や連絡を断ったのにはなにか事情があって、彼も沙綾と同じ気持ちだったのではないか。

だからこそコンシェルジュを通じて連絡をして弟に様子を見に行かせたのだとしたら、大地の『次こそちゃんと仕事に理解のある人と結婚してほしい』という言葉にも納得できる。

夜中に聞いた電話や用意された高級マンションの真相はわからないままだけれど、沙綾を探し出し、三年経った今も妻として望んでいるのは、本当は拓海も自分を愛してくれているからではないかと思い始めていた。

自惚れかもしれない。だけど、もしそうだとしたら、自分はなんて身勝手な振る舞いをしてしまったのだろう。

「もうどっちにしても拓海さんに合わす顔がない」
「沙綾」
「湊人だけは幸せにしようって決めて一年前にあのマンションを出てきたはずなのに、私が同居をきっぱり断れなかったせいで、拓海さんに懐いた湊人を彼から引き離すことになっちゃうし……」

湊人を一番に考えるのなら、本来ははじめから同居なんてするべきじゃなかった。

恋はしないと決めたくせに、行動が伴っていない自分が嫌になる。

ぐずぐずとネガティブな考えばかり浮かび、それに付き合わせている夕妃にも申し訳ない気持ちが重なって自己嫌悪でいっぱいだった。