いつも寝かしつけの時に「いい子ね、湊人。ねんねしようね」と言いながら背中をたたいているのを、沙綾にしてくれているらしい。
「まま、えーんしないのよ。ねんね、ねんね」
とんとん、とんとん、肩を叩かれるたびに涙がとめどなく溢れた。
拓海への切なく苦しい想い、湊人への愛しさ、自らへの不甲斐なさがごちゃまぜになって嗚咽に変わる。
(大丈夫、私には湊人がいる。この優しくて愛しい子を守りながら生きていく)
湊人を抱きしめてひとしきり泣いた後、沙綾は涙を拭いて荷物を手早く纏めると、ねんねと言いながら自分が眠ってしまった愛しい我が子を連れて拓海の部屋を出た。
* * *
「で? なにがあったの?」
綺麗な顔を歪めて睨む親友に、沙綾は肩を小さくして俯いた。
「ごめんね、毎回頼っちゃって」
「大丈夫。誕生日の後どうなったか気になってこっちから電話したし、オフで実家に顔出しに来てたから」
拓海との繋がりを断ち切るとはいえ、今は仕事もしていて連絡手段のスマホの電源を長時間落としておくわけにはいかない。
三ヶ月ぶりにアパートに帰りスマホの電源を入れたところでタイミングよく夕妃からの着信があり、湊人を連れて彼のマンションを出たと話すと、彼女はすぐに駆けつけてくれた。



