彼が求めているのは信頼だとしても、沙綾の拓海に対する感情はそれだけではない。男性は感情と欲求は別物だと理解しているが、自分は違う。

相手が彼だったから三年前も身体を許したし、湊人を生む覚悟が出来た。拓海だから先日のキスも受け入れた。

指先を唇に当てながら思い返していると、「まーま! できた!」と湊人に裾を引っ張られハッと我に返る。

今日のお昼ごはんにうどんをリクエストされたため、上手におもちゃを片付けられたら一緒に買い物に行く約束だった。

リビングを見渡すと、先程まで散らばっていたフラッシュライターの武器やぬいぐるみなどは、乱雑ではあるがおもちゃ箱に入れられている。

「わぁ! とってもきれい。お片付け上手だね、湊人」
「しゅごい?」
「うん、すごい」
「やったぁ! いこっか」

最近の湊人は子供用のカートを押すのにハマっていて、スーパーへ行くのが楽しみで仕方がないらしい。

しっかり手をつなぎ、スーパーでは走らないと言い聞かせてから家を出た。

「うどんになに入れようか」
「たまご!」
「いいね、ママはおいもの天ぷらも入れようかなぁ」

おしゃべりしながら買い物を済ませ、マンションに帰るとすぐに昼食の準備に取り掛かる。