五日もかからずに沙綾の居場所を突き止め、翌日には彼女が未婚で子供を産んでいることまで調べ上げた。

(子供……? それも、未婚だと? ユウキとかいう男はどうしたんだ)

弟から聞いた話だと、マンションの外だというのに人目も憚らず愛を叫ぶ情熱的な男らしい。

沙綾のために用意したマンションで自分以外の男と愛を育んでいたのかと思うと嫉妬で狂いそうだが、彼女が幸せならと断腸の思いで諦めようとしていたのに、子供を授かっておきながら彼女をひとりにしているユウキという男に対し腸が煮えくり返る思いだった。

マンションを引き払い、呆然としたままドイツに戻った拓海は、何度も自問自答し、ついに答えを出した。

(沙綾を取り戻す。他の男との子がいようと関係ない。子供ごと愛してみせる)

そう決意した拓海を後押しするかのごとく七月までのドイツ赴任が僅かながら繰り上がり、日本で開催されるG7に関われるよう四月一日から本省勤務となった。

帰国後、真っ先に沙綾の住むアパートに向かったのは、ひと目だけでも彼女に会いたかったからだ。

久しぶりに会った沙綾は拓海を見ると驚きに目を見開き、その後子供を守るように彼を自分の身体の後ろに隠す。

その仕草に、すでに自分は彼女から愛されるどころか警戒されているのだと実感し胸が軋んだが、怯まぬよう内心で自身を叱咤しながら契約の期限を盾に同居を迫った。

プロポーズ同様強引だったのは重々承知だが、それ以外に彼女と接点を持ち続ける手段が思い浮かばなかった。

同居をはじめて二ヶ月以上経ってもいまだに戸惑いを見せる沙綾とは違い、彼女の息子の湊人は驚くほど拓海に懐いてくれている。