怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


『早期解決しそうだというのにわざわざマンションを用意するのは、不特定多数が出入りするホテルよりも安全だからか。それとも、彼女を囲っておきたいからか? 何にせよ、物凄い入れ込みようだな』
「言ってろ。お前もそのうち何よりも大切にしたいと思う女が見つかる」
『そうだといいけどな』

その後、仁が探してくれたセキュリティのしっかりしている高層マンションの契約を済ませ、沙綾にはほとんどなにも説明をできないまま帰国してもらった。

彼女は呆然としていたが口を挟んでくることはなく、俺の様子からなにかただ事ではない事態が起きているのだと察していたと思う。

「詳しい事情は落ち着いたら必ず説明する。今は急いで日本へ戻るんだ。俺が連絡するまで、悪いが沙綾からは連絡しないでほしい」

今言えるのはこれしかない。

相手がどんな手段に出るかわからない現状では、迂闊に沙綾と連絡をとるのも躊躇われる。

念には念を入れ、外務省と彼女との繋がりを今だけは断ち切っておきたい。

「必ず連絡する。待っていてほしい」

胸の中の煮えたぎるような情熱を必死に捻じ伏せ、ただ一言にすべての想いを込めた。

沙綾は戸惑いと悲しみを浮かべた瞳で拓海を見上げるだけで頷きはしなかったが、それでも拓海は盲目的に信じていた。

『好き』だと言葉にしてくれた彼女が、健気に自分からの連絡を待っていてくれると。