(もう一度、私が拓海さんを恋愛的な意味で好きだと伝えて、その上で結婚したいという意思が変わらないのか聞いてみたい。もしも頷いてくれたら、その時は湊人の父親はあなただって、話してもいいかな……)
沙綾は契約結婚を承諾した日を思い出した。
『俺は、君を裏切ったりしない』
あの真っすぐな瞳に偽りはなかったと思う。だからこそ、強引さはあれど提案に頷いたのだ。
湊人を抱く拓海と見つめ合い、沙綾の鼓動はトクトクと早まっていく。
沙綾を包み込むような眼差しは温かく、そこにはやはり愛があるように思えて自惚れてしまう。
「あぁ、わかった」
頷いた拓海が、ゆっくりと顔を寄せてくる。
沙綾はそれを察しながら、避けることも手のひらで制すこともしないで、そっと目を閉じた。
(やっぱり、私はこの人が好きだ……)
久しぶりに感じる拓海の唇の熱を覚えていた自分が切なくて、じわりと目頭が熱くなる。



