怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


ヨーロッパ随一の日本人街のある場所で、住み始めた当初は言葉も通じず、心細さから日本人の子とばかり遊んでいた。

契機となったのが小学校五年生の頃、聖園歌劇団が海外公演でベルリンに来た。

女性だけで構成された日本の劇団が興行にきたとニュースにも取り上げられ、興味を持ったクラスメイトが日本人の沙綾に話しかけてくれたのがきっかけで、現地の子ともうまく交流できるようになった。

両親に頼み込み、ベルリンで公演を観劇した帰りの飛行機に乗っている頃には、熱心なファンになっていたのは言うまでもない。

そんな経緯もあり、沙綾は聖園歌劇団には並々ならぬ思い入れがある。

「確か英語もかなり話せたよな。君が出ていた英語劇を見たことがある」
「はい、それなりに」
「人見知りはする方?」
「いえ、そんなにしないです」
「好きなタイプは“浮気をしない人”か。過去に嫌な思いでもしたか」
「はぁ、まぁ……」

なぜ婚活パーティーで久しぶりに会った学生時代の先輩に、こんな風に質問攻めにされているのだろう。

一方的に質問されてそれに答えながら、なんだが就職面接のようだと首をひねっていると、拓海が「よし」と呟いて、大きく頷いた。

「君に決めた」
「……はい?」

何の話かわからず聞き返したところで、トークタイム終了の合図が鳴り、それ以上聞く機会を失ってしまう。

拓海は瞳にどこか鋭い光を宿して沙綾を見つめた後、隣の席に移動していった。

彼が気になり、気もそぞろのまま最後のひとりとの三分間を終えると、いよいよ参加者にとって最大の山場となるフリータイムとなる。

積極的に相手を探しているわけではない沙綾は、なるべく邪魔にならないようにと会場のすみっこに移動して、スタッフにドリンクのおかわりを貰う。

一時間以上話していたので、喉がカラカラだった。