世界中の名画を盗み、その絵に宿ったパワーを吸い取る『ヌスムンダー』のボスである怪盗スティール伯爵と、彼から名画を守る秘密警備隊フラッシュライターの戦いの終盤は、リーダー同士の一騎打ち。
「まーま、れっど、かちゅ?」
「どうかなぁ? 伯爵も強いから、わからないね」
湊人は当然ながらヒーローのフラッシュライターを応援しているが、沙綾は悪役ながらスマートな身のこなしの伯爵がお気に入りで密かに彼を推している。
「たくみ! らいたーれっどよ! みて!」
「あぁ、見てるよ。かっこいいな」
「ちゅかまるっ! おうえんしゅるのー!」
隣に座る拓海の腕を掴み、一緒に応援しようと誘う湊人を見て、堪えきれないといった様子で笑った。
「ハハッ、本当によく似てるな」
「え?」
「ブランデンブルク門に行った時の君と同じ顔だ」
拓海が思い出すように目を細め、からかい混じりの表情を向けてくるので、頬が熱くなる。
「わ、私、こんな感じでしたか?」
「あぁ、まったく同じだった。可愛いな」
こぶしを上げて応援している湊人の頭をくしゃっと撫でる拓海の横顔を食い入るように見つめた。
(可愛いっていうのは湊人に言ったのよ。わかってるのに、無駄にドキドキする……)
ぎゅっと目を瞑り、小刻みに首を振る沙綾を横目で捉えていた拓海はクスッと笑うと、再びステージに視線を戻した。



