怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました


すると「君たちさえよければ」と前置きをして切り出されたのは、沙綾にとってはタイムリーな話題だった。

「どこか三人で出掛けないか」
「え? でも、お疲れなんじゃ……せっかくのお休みなのに」
「いや、このくらいなんともない。それに、俺が君たちと一緒にいたいんだ。どこがいい? 聖地巡礼でもなんでも付き合うぞ」

こうしてさりげない優しさを見せられると、あの頃と同様の勘違いをしてしまいそうで困る。

“聖地巡礼”という言葉で、彼が自分とのドイツでの生活を忘れてはいなかったのだと思わされ、心の奥がきゅんと鳴った。

その音を聞こえないふりで平静を装いながら、沙綾はあさってが湊人の二歳の誕生日なのだと告げた。

「あの子の好きなヒーローショーが遊園地でやってるみたいで、それに連れて行ってあげようと思ってるんですけど」
「誕生日か。そんな大事な日に、俺も一緒で構わないのか?」
「もちろんです。お祝いしてやってくれますか?」
「ああ、喜んで。俺が車出すから、三人でいこう」
「はい」

その三日後。

「まーま! らいたーみんないりゅ! はくしゃくも!」
「うん、スティール伯爵出てきたね」
「しゅごい! あのね、びゅーんしゅるの! ばーってきて、しゃきーんしゅるの!」
「そうだね、かっこいいね。ライターは伯爵に勝てるかな? ほら、応援しないと負けちゃうってお姉さん言ってるよ」
「だめーっ! がんばれー、らいたーれっど!」

大好きなフラッシュライターを間近で見て大興奮の湊人を膝に乗せ、沙綾も一緒になってヒーローショーを楽しんでいた。