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「僕を尾行していた?」

 ユリウス先生の眉間にたくさんの皴が寄る。
 学園に戻ってきた私たちは先生の部屋で尋問を受けていた。

「なぜそんなことを」
「先生こそ、あんなとこで何してたんだよ」

 先生の質問を遮るように訊いたのはラウルだ。
 ユリウス先生はその問いになんでもないふうに答えていく。

「僕ですか? 夜回りですよ。最近何かと物騒なので他の先生方と手分けして街まで見回りを行っています。今日は特に休日前ですし、あなた方のように無断で外出する生徒がいないとも限りませんからね」

 それを聞いてラウルが悔しそうな顔をした。

「紛らわしいんだよ」
「紛らわしいとは?」
「あの……! 先生は、最近頻発しているという誘拐事件のことはご存知ですか?」

 そう思い切るように訊ねたのはアンナだった。

「勿論耳に入っています。夜回りをするようになったのもその件があったからです」

 と、その視線が私に移りドキリとする。

「先ほど、あの不審な人物と何か話していた様子でしたが」
「そうだお前、あの男は何なんだよ。知り合いっぽかったじゃねえか」
「え、えっと、」

 ラウルに責めるように問われ、アンナが心配そうな顔で続けた。

「あの人、レティをずっと捜してたって言ってたわ。それに、レティのことを『姫』って」
「『聖女』とも言ってたぞ。なんだよ、聖女って」