「明日は先生が外出されたらすぐにわかるように、ここからなるべく見張っていようかなって」

 言いながら私はふたつのベッドの間にある窓から外を見下ろした。
 幸い、三階のこの部屋の窓から正門へと続く道が見えるので誰かが学園から出ようとすればすぐにわかる。

「も、もし、先生が外出されたら?」
「勿論、ついて行くつもり」

 即答するとアンナは瞳を大きくして、それから思い切るようにして口を開いた。

「もしそうなったら、私も一緒に行くわ」
「え?」
「だって、レティが心配だもの」
「アンナ……ありがとう」

 そう言って笑い合っているときだった。
 ふと視界の端に映ったものに、私は大きく目を見張った。

「アンナ、早速なんだけど……」
「え?」
「ユリウス先生、外出されるみたい」
「え!?」

 暗がりで、しかも帽子を被っているけれど私にはわかった。
 あの背筋のピンと伸びた綺麗な歩き方はクラウスに……いや、ユリウス先生に間違いない。


  ⚔⚔⚔


「なんで俺まで……」
「元はと言えばラウルがレティを焚き付けたんでしょ!」

 そんな幼馴染ふたりのこそこそした会話が背後から聞こえてくる。