「ローレン大佐!?」
「ローレン大佐!?」

 ひっくり返ったような声を上げたのはアンナとイザベラだ。
 そうして、ガサリと叢を割って出てきたのは昨日話したばかりの彼だった。
 肩を竦め、飄々とした態度でローレン大佐が言う。

「な~んだなぁ、やっぱり気付いていやがったのか」
「良く言いますよ。気配全く消していなかったじゃないですか」
「お前のくっさい芝居を笑わずに静か~に見守ってやってたんだ。褒めて欲しいもんだぜ。――と、そんな悠長なこと言ってる時間はなさそうだな」

 ローレン大佐は、マルセルさんの身体を軽々抱き上げると先生に向かってにぃっと笑った。

「大切な人、守れて良かったなぁ。ユリウス」
「……えぇ」
「こっちはいつでもお前の帰りを待ってるからなぁ。やっぱお前は教師よりも断然こっち向きだわ」

 そう言い残し、彼は大の大人ひとり抱えているとは思えない速さで走って行ってしまった。
 それを見て慌てたのはリュシアン様だ。

「――ま、待て! 私も行く! おい、待てと言っているだろうが貴様ぁーー!!」

 そんな彼の怒鳴り声が次第に遠のいていき。

「ふぅ……」

 ユリウス先生が小さく息を吐くのが聞こえた。